Z周期縞対策
- カテゴリ: 3Dプリンタ
- 投稿日時: 2017/11/12(日) 12:05:48
11月11日は「独身の日」です。静観するつもりがまんまとハマって、AliExpress で色々買ってしまいましたよ。到着したらレビューする予定です。乞うご期待。
さて、またしても自作3Dプリンタの話題です。
Z軸に使用している M8 の寸切りボルト由来と思われる 1.25mm ピッチの積層縞の対策をしていきます。
調べてみたら、今時のマシンは送りネジ ( Lead Screw ) を使うのが主流のよう。従来のものはいわゆる三角ねじでしたが、台形ねじを使うのがトレンドみたいです。三角とか台形とかはネジ山の断面の形状のことで、締結用の普通のネジは三角ねじです。
送り機構に使われるネジ軸としては、三角ねじ台形ねじの他にボールねじというものもありまして、本業ではもっぱらそっちを使ってます。摺動面に無限循環する小径ボール ( 鋼球 ) が組み込まれていて、与圧をかけても滑らかに動きます。効率も 98% くらいで非常に高いです。もちろん精度もお値段も高いです。
で、ボールねじに慣れている身としては「え、台形ねじ?」みたいな感じ。なんといっても効率が悪い。リード角と摩擦係数から導き出せますが、とある資料には 24% なんて数字もあります。
でもよくよく考えてみると、現状三角ねじで動いているものを置き換えるのだから、台形ねじで問題ないんですね。三角ねじのほうが断然効率は悪いのだから。
AliExpress などで販売されている 3D プリンタ用送りネジのほとんどは「Tr8×8」という規格です。外径 8mm リード 8mm です。4条ねじでピッチは 2mm。不思議なことに JIS にも ANSI にも該当する規格はありません。どこぞのメーカーの独自規格と思われますが、それにしてはずいぶん普及してますけどね。あ、もしかしたら GB 規格かも。調べてませんが。
リードが 8mm というのはどういうことかというと、ネジ軸が一回転するとナットは 8mm 移動するということです。一般的な話ですが、直動機構のネジ軸が偏芯していたり曲がっていたりすると、ネジ軸一回転の周期でなにか悪いことが置きます。現状は 1.25mm ごとに縞が出ていますから、Tr8×8 を使えば、仮に同じ周期縞が出たとしてもその周期は 8mm になるはずです。
ただしリードが 8mm なので、現状の 1.25mm の 6.4 倍。単純に考えてモーターは 6.4 倍のトルクを出さなきゃならないし、分解能も荒くなってしまいます。いくら採用実績があるとはいえ不安です。不安なのでまずは計算してみました。
モータで動くものを設計するときは、動かされるものの重量、イナーシャ、加速度をもとに必要なトルクを算出し、モータのカタログスペックと比較します。分解能はステップモータの1パルスあたりの移動量が必要な値の 1/10 以下になるようにします。間違っていると恥ずかしいので詳細は書きませんが、モータの保持トルクを 0.22Nm 、加速度を Marlin のデフォルト値 100 mm/s^2 とすると、安全率は 2.4 倍と出ました。分解能はマイクロステップ前提で1パルス当たり 5μm。どちらも問題ありませんね。モータロータイナーシャと全体のイナーシャの比は 16.8 倍で NG ですが、正転反転を繰り返したりするような動きをするところではないので大丈夫なはずです。
さて、AliExpress で売られている Tr8×8 にも色々なバリエーションがありまして、どれにしようか迷いましたが、アンチバックラッシ機構のあるこれにしました。ネジ軸とナットの互換性とかさっぱりわからなかったので、セット品が無難だろうと。
全長 300mm のもの、送料無料で単価が737円。安いなぁ。
ナットのフランジ部分の取り合いとかももちろん不明。拾った図面を元にモデル化してはみたものの、取り付け穴がどうもおかしい。
バネで突っ張るタイプのアンチバックラッシ機構なので、フランジがついているナットは下、ついていないナットは上に配置しないとダメです。逆にすると自重をバネで支えることになります。これは好みですが、ネジだけで自重を支えるのはよろしくないので、ナットの上にスライダが乗るようにするのが常道。
でも取り付け穴とバネが丸かぶりです。うまく言葉で表現できませんが、ナットを通すためにスライダに穴を開けると固定ができません。どうするんだ?
ってとこで、現物を測るのが確実なのでしばらく保留。
ナットにあいていたのはバカ穴ではなくタップ穴でした。なるほど、逆側から取り付けるのを想定してるのか。
ネジだけでぶら下げるわけですね。まあいいか。
サクッと設計完了。フィーチャーベースの CAD って慣れると便利ですわ。
プリント完了。残念、しくじってます。途中まではうまく積んでたのにねぇ。層間の溶着強度不足とソリで、途中部分の壁がポロッと落ちちゃったんですね。秋も深まる今日このごろ、だんだん室温が低くなってきてます。休前日の夜間に印刷しっぱなしで就寝したので、もろに室温の影響を受けたのでしょう。保温ボックスを検討しないといけないなぁ。
失敗はしてますがもったいないのでなんとか使ってしまいます。
それにしてもシマシマだなぁ。
リニアベアリングを通すφ15の穴を木工用ドリルで追加工し芯出し。インサートナットを打って前加工は終了。プリンタ本体を分解して組み直します。
この作業は三度目なので手慣れたものです。加工時に層割れしたところは、サポートや失敗したプリント品をアセトンでどろどろに溶かしたパテ状のものを塗り込んで補修してます。いつか作り直す予定。
見た目はともかく機能的には問題ないはずのものが出来上がりました。
ちなみに三角ねじであれほど苦労したネジ軸の芯出しは恐ろしく簡単でした。この台形ねじは円筒状の外径部分がちゃんとしているということです。
早速テストプリント。まずは 10×10×20 の直方体。例の周期縞は見えませんね。
続いていつもの Test your 3D printer! by ctrlV 。下が前回のもの、上が今回のもの。明らかに品質が上がってます。
ツイッターのタイムラインで流れてきた MatterHackers のフィギュア を50%サイズで出力。周期縞についてはよさそうです。
ところどころで表面に見えるブツブツは、リトラクトの設定とホットエンドの温度を見直せば改善できそうです。
ってことで、Z軸の昇降機構に台形ねじは効果ありですね。
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