1/24 ダンバイン製作記 (14) - 翅
オーラバトラーの翅 (はね) は悩みどころです。
劇中では透過光でのっぺりしたものとして表現されてます。設定画でもぼわっとぼかして描いてあります。ある意味 1/72 の旧キット金型改修前の、クリアパーツで表面梨地加工ってのが正しいのかもしれません。
とはいえ当時の模型誌作例は昆虫の翅のようなディテールを入れるのが常でした。昆虫の翅らしくするには葉っぱの葉脈みたいな模様、翅脈 (しみゃく) が必要。旧キットも金型改修で翅脈のモールドが追加されてましたね。
伸ばしランナーの太さが均一でない、翅脈と翅脈の継目がうまく接着できない、形状を思ったとおりにするのが難しい、貼り合わせたマスキングフィルムが伸ばしランナーのところで浮いてしまう、等々。今思えば伸ばしランナーではなくて釣りのテグスかなにかを使うべきだったのかも。
で、今回のリメイクで是非とも試してみたかったのが、3D プリンタによる翅脈の作成だったというわけです。いまは何もかも全部 3D プリント品に置き換えてますが、当初は翅だけ 3D プリンタを利用するつもりでした。
イラレは仕事で使っていたこともありますが、ほぼ素人の域を出ていません。きれいにパスを繋ぐ方法がわからず、DXF にした段階でなかなか悲惨な状態でした。SketchUP で押し出して厚みを付けてみたものの、幅が場所によってまちまち。プリントしてみると思ってもみなかった順序で線が埋まっていきます。あー、だめだこりゃって感じでした。
翅脈のつくり方もそうですが、もう一つの難関は薄くて透明な膜を張る方法。
サランラップ的なものを張るにしても、接着剤が効かないのでうまく固定できないでしょう。
インドアプレーンの翼のように、水を張ったたらいに接着剤を一滴垂らして、表面張力で広がったところをすくい上げるなんて方法もありますが、あまりに繊細すぎるのでパス。インドアプレーン用のフィルムも売ってますがめっちゃ高いです。
で、ある日のこと。何かの用事で家族で百均へ。いつものように工具とか素材とかを物色していたところ、娘がなにやらこまごまとしたキラキラ光るものをたくさん買い物かごに入れております。UV レジンクラフトというやつの材料で、聞けばクラスの友達の間で流行っているとのこと。
好きなものを透明な紫外線硬化樹脂で封入してアクセサリをつくるのが UV レジンクラフト。枠になるパーツや中に入れる星型のパーツなどいろいろ売ってます。
紫外線硬化樹脂が百均で売っているということが衝撃でした。この時は何に使うとのあてもなくひとまず2本購入。
ちなみに型を使わずドーム状に直接盛り上げる場合は、業界用語的にはドーミングともいいます。
固めるには紫外線ランプが必要と思いきや、日光に晒せば硬化すると取説には書いてあります。確かにそのとおり。日光には硬化に必要な波長も含まれていますからね。
ところが数日後、カミさんが娘になにやら手渡しております。懐中電灯型の LED ライト。青い光が出ます。UV レジンクラフト用の硬化ライトです。AMAZON で300円くらいで買ったと。
いや、紫外線硬化樹脂は波長365nmの紫外線にしか反応しないはずで、LED 単品でも結構なお値段がするはず。とても300円では買えるはずないです。案の定、いくら照らしても固まりません。波長が違うんでしょう。結局、今までどおりお陽様の力に頼ることになりました。
さて、かなり話が脱線してしまいましたが、翅の薄くて透明な膜はこの UV レジンを試してみることにしました。
試作の2回目は翅脈を Fusion 360 でモデリング。スプラインをパイプコマンドで押し出してます。オブジェクトまで押し出しして結合するときれいにつながりました。Fusion 360 すばらしい。Cura でスライス、自作 3D プリンタで出力。翅脈の太さは 0.9mm です。一発目の試作と比べてかなりうまくいきました。
PPプラダンにシワなし PIT で固定し、ダイソーの UV レジンソフトタイプを流し込み。日光に当てて硬化させました。
プラダン表面がそのまま転写されてしまったので透明度は低いです。
部分的に厚盛りになってしまったらしく、硬化収縮でシワが寄っているところもあります。とはいえ概ね良好。
感触は良いのでこの線で進めることにします。
太陽光に頼っていると作業の時間帯が限られるので、硬化用の治具を作成。セリアで調達した簡易 LED デスクライトの玉を UV-LED に打ち換えます。玉は AliExpress で10個 575円というシロモノ。商品説明によると 365nm の波長、3.6V 20mA とありました。
百均デスクライトは単三電池3本仕様で制限抵抗は 24Ω でした。ちょっと電流流しすぎですがひとまずそのままとします。
点灯させてみると可視光は弱め。だからといって光が弱いとも限りません。こればっかりは専用の測定器がないとわかりません。こんな写真撮っておいてアレですが、直視するのはもちろん危険。
0.9mm はちょっと太すぎるかなという感じがしたので、0.8mm で再モデリング、出力してカッターで適宜整形。
白い樹脂色のままだと羽化したばかりっぽくて弱そうなのでラッカーの黒で着色。
ソフトタイプだと文字通りふにゃふにゃしていて、盛りが薄いところをきっかけにして簡単に剥がれてしまうことがわかったので、ハードタイプを盛ってみました。
4枚揃えて背中に実装する直前まで行きましたがボツ。黒い色が強すぎるのと縁が厚ぼったくて精密感がないのが理由。
薄くて均一な透明部分をつくるためにいろいろ試しました。出力した翅脈をベタおきにして上からUVレジンをぽつぽつと置いていくと、どうしても翅脈が浮かんできてしまうんですね。テープで固定したり、要所要所を爪楊枝で押さえてみたり。最終的に編み出したのは、クリアファイルでサンドイッチする方法。
クリアファイルは内側が梨地外側がつるつるなので、一旦切り開いてすべすべの面を使うようにします。
挟んだ時に入ってしまう気泡は気にせずに硬化させてしまって、あとから気泡部分にレジンを追加して均します。
翅脈はオレンジで塗装しあらかたシンナーで拭き取ってしまいます。本体の塗装をする時にあらためて塗ります。
翅の付け根部分は最後の最後まで悩みました。
大雑把な形状だけ作っておいて最後は現物合わせで取り付けっていうやり方はうまくいかないです。ちゃんと取り付けられるように 3D モデルの段階で考えておかないと破綻します。
背中側に大穴をあけておいて、根本の先端を半球状態にした翅を差し込んでなりに固定する予定でしたが、どうにもうまく位置決めできません。最終的にはボールジョイント風の形状にして、複数部品を一体成型にしてしまいました。あくまで「風」なので動いたりはしません。
出来上がり。根本にはエポキシパテでそれらしいディテールを。他の関節部分と同様です。
UVレジンのところ、細かい気泡がけっこう残っちゃいました。あと、全体にのっぺりしていて面白みに欠ける気もします。
控えめにしたとはいえオレンジが目立ち過ぎかな。ベビースターラーメンかナポリタンみたい。もうちょっと淡い色のほうが良かったかもしれませぬ。本体の塗装で雰囲気が変わるのを期待しましょう。
今回はここまで。次回からはいよいよ塗装かな。
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