220円のキッチン温度計で単車の油温計をつくる
小型化しようとフタを開けたらFFCがもげてしまった自作油温計、懲りずに新しいものをつくることにしました。
まずは壊してしまった油温計のかわりになるドナーを購入。久しぶりにAliExpressです。
いえ別にキッチン用品にこだわってるわけではありませんよ。ただ単に貧乏なだけですからwww
この温度計、色違いだけでなく、形状は全く同じで表示パネルの中央上部にあるロゴだけ異なるという製品が山のようにあります。どれがホンモノでどれがコピー品かはわかりません。いや全てOEM品でホンモノということもありうるし。その逆もしかり。
ちなみにAmazonでも同じものが売られてます。国内発送品の場合でだいたい700円前後送料別。あ、いや、同じものかどうかはわかりませんね。似ているものといっておきましょう。
Amazonを使う利点は、国内発送なのですぐ来ることと、なにかあったらAmazonが対応してくれるところですね。AliExpressもそれなりに対応はしてくれるとはおもいますけど。ちなみに安価なマーケットプレイス品もありますがそちらは中国発送。
値段と評価できめたショップは浙江省温州市から品物を発送してきました。3月10日発注、30日到着。中国郵政のトラッキングなし普通郵便。ちょっと遅めかな。いやこんなものかも。
そのまま銀色のポリ袋に入れて送り状を貼っただけの雑な梱包でしたが、円筒形の透明PET製専用ケース入りのためか、破損とかありませんでした。
機能は前のものとほとんど同じ。測定範囲は-50℃から+300℃。誤差は0~80℃で±1℃、それ以外で±5℃。スイッチは4つでそれぞれON/OFF、摂氏華氏切り替え、ホールド、最大最小表示です。15分でオートパワーオフ。
モノによっては青いバックライト付のものもあるみたいですが、買ったこいつは… 残念、光りません。
あ、ちなみにですが、今回購入したブツは TP101 という品番のものですが、ほぼクリソツでスイッチがON/OFFと摂氏華氏切り替えの2つしかない WT-1 なんてのもあります。
息つく間もなく殻割り分解。っていうか分解はメチャメチャ簡単でした。ねじ込み式の丸い電池のフタを外して、検温部も同じように外して、赤いゴムリングを取り外せば、ガワはカパッと開きます。なんじゃこりゃっていうレベル。ガワの成形は荒いです。赤いゴムはOリングみたいな顔をしてますが全く防水性はありません。
料理のときに使う温度計なら防水は必須だと思うんですけどねぇ。鍋に入れて温度測ったら、洗いたいじゃないですか。
なにかに似てるなと思ったら、 Kangertech の SUBTANK MINI ですね。色合いといいサイズ感といいまんまです。
中身もほぼ想像通りです。
液晶の大きさは表示部が約30mm×15mmで前のものよりだいぶ小ぶり。っていうか、だからこれを選んだわけです。液晶の左右にボタンが配置されています。この部分を切り取ってしまえばさらに小型化できそう。
液晶と基板の接続部は、結構ナイスなものが使われていました。薄い導電ゴムと薄い絶縁ゴムが交互に積層されたブロックです。取り外しも簡単で、適度な圧力をかければ電気的な接触もOK。これはいいです。ゼブラゴムというそうです。
っていうか、これさえあれば前のものが修理再生できるんですね。やりませんが。
検温部はステンレス管にサーミスタが入っている構造。サーミスタの抵抗を測定してみたところ、だいたい20℃で100kΩでした。3Dプリンタで使っているものと同じみたいです。
サーミスタと延長ケーブルははんだ付けではなくカシメられてます。すばらしい。使いませんが。
なおステンレス管部分を200℃の油の鍋に入れてほっといたら、根本の樹脂部分が溶けてくると思われます。
困ったのがオートパワーオフ。油温計として使うためには是非ともキャンセルしたいところですが、基板があまりにもシンプルなため、いじりようがありません。
テストパッドとかジャンパとかなにもなし。未実装なパッドが一組だけありますが、コンデンサ用で単純にオンオフボタンと並列につながってますね。たぶんチャタ対策とかの保険だったんでしょう。
ON/OFFボタン押しっぱなしとかHOLD押しながら起動とかいろいろ試しましたが、どうやってもオートパワーオフがきいてしまいます。実測でだいたい12分くらい。
ON/OFFボタンを押さずとも電源供給ですぐ起動はするので、普段は消えていて、温度を確認したい時だけ手動でオンすることにしましょうかね。もちろんバックライトも取り付けます。
手動オンはよいとして、何も表示されてないのにバックライトだけ点いてるととてもマヌケです。連動させないとね。
プッシュボタンを操作するとバックライトが点灯し温度が表示される、しばらくするとバックライトが消えて同時に温度表示も消える、っていうのが理想。いわゆる「遅延オフ」「オフディレイ」ってやつです。
もっとも一般的らしい、CR充電でトランジスタを駆動するタイプをブレッドボードに組んでみました。
…んー、ちょっと違うなぁ。
オフ時にスパッと切れません。電圧が徐々に下がっていきます。例えば負荷がLEDだったりすると、スーって感じでだんだん暗くなっていくんですね。
相手がLEDだけだったら減光処理ってことでそれはそれでいいのだけど、さらに並列に繋いだ負荷、今回の場合は温度計ですが、そちらが必要としている電圧はLEDとは異なるので同時に切れません。なお温度計自体は1.5V駆動です。前と同じく抵抗で分圧して12Vから1.5Vをつくってます。
手持ちの関係で適当に決めたCとRで、温度計は5秒くらいしか持ちませんでした。LEDはしぶとく3分くらい光り続けます。
CとRを大きくすればするほど遅延時間が延びるとはいえ、コンデンサの容量を大きくするためにはそれ相応のスペースが必要になります。試したのは470uFなのでまあまあそれなりの大きさ。これ以上大きくするのは現実的じゃありません。そもそも時間を伸ばしても連動しないとイヤです。
ってことで違う回路例を探しました。しばらく四苦八苦して、 ITmedia が運営する電子機器の設計・開発情報サイト EDN JAPAN の記事にたどり着きました。
Wired, Weird:これも便利!! 負荷を一定時間動作させる「シリアルタイマー」
スイッチやセンサと並列に入れる回路で、別電源は不要。FETとトランジスタを使います。詳細はリンク先参照ください。
温度計用の1.5Vを生成する分圧部分とバックライト用のLEDを入れた回路図です。ブレッドボードに組んで動作確認。手持ちの関係でFETは2SK2231、トランジスタは2SA2014を使用しました。カスタマックスのチューンで使った部品の余り物です。表面実装品。
いいですね。期待通りの動きです。スパッと切れます。
遅延時間はコンデンサで決まります。とっかえひっかえ試して47uFに決定。机上では約1分間の遅延でした。
なお1MΩの抵抗を10MΩにしたり、元電源を高圧にしたり、ゲートしきい電圧が低いFETに換えたりすれば、さらに時間は伸ばせるようです。
回路が決まったので器をつくっていきます。
まずは導光板。
前のものを流用するつもりでしたが、厚すぎで断念。新規に起こします。
つくりかたの基本は前の時と同じ。透明なプラスチック板を白いシートでサンドイッチしてアルミテープで遮光する構造とします。
ヒートカッターでざっくり切り出し、ヤスリで整形。端面は番手を上げて磨き込んだ後、コンパウンドで仕上げます。
抜き勾配の関係で厚みは均一ではありませんがまあ気にしない。
白色のクリアファイルとプラペーパーで挟み込み。サイドは光漏れ防止のためアルミテープを貼ります。
光を受けて散らす白いドットがないので、代わりに片面を240番のペーパーで荒らしておきました。これをやらないと中央付近が暗くなってしまいます。面積が小さいので削りムラは目立たないでしょう。
LEDは削り込んで導光板と厚みを合わせます。前はブルーでした。気分転換も兼ねて3mmのアンバーを使います。ちなみにこのLEDではないです。
LCDの裏側の反射シートをはがしてバックライト対応にします。この辺りはまんま前と同じ工程。糊残りは軽微で溶剤は使わずともきれいになりました。反射シートの下にある偏光板ははがさないように注意ですね。
…ええ、この写真は失敗してます。偏光板まではがしちゃってます。偏光板がないと液晶に通電してもなにも見えません。当たり前です。
自分が書いた記事を見ながら作業したにもかかわらずこの有様。
ブレッドボードに組んだ回路を本番仕様に仕立て直します。厚みを抑えたいのでユニバーサル基板は使わずに空中配線。一番場所をとるコンデンサは、レイアウトに苦しんだ末、別置きに。すべて面実装品にすればもっとコンパクトになるでしょう。
最終的にはエポキシで固めます。
基板を小型化すべく、ボタンと電池ホルダの部分を切断。取付ネジ用の穴は残しました。基板の全長は39mmになりました。
カットは昔懐かしいピラニアンソーを使用。切れ味が落ちてきているのでそろそろ新調したいところ。
前回はダイソーのスタンプケースを改造しましたが、今回の外装は3Dプリンタを使います。好きなように形が作れるって、やっぱりいいですね。
いつものように SketchUP でガワの設計。あんまり深いこと考えずに適当に。とはいえフィレット部は精密に出力できないと踏んで、後加工の荒が見えにくくなるようにデザインしました。
SketchUp、いつもは色とか着けずに白一色でモデリングしてますが、ごちゃごちゃしてなんだかわからなくなってきたので、コンポーネントごとに色分けしてみました。
白ABSでプリント。はめ合いの微調整で何度かやり直してますがやり直しも簡単です。
とはいえ今回は苦戦しました。Prusaの調子がイマイチだったんです。原因不明の積層ズレ多発。ベルトを張り直したり加速度を落としたり温度を振ったりといろいろやりましたがよくわからず。結局、モデルの向きを180度変えたらうまくいきました。スライサーのバグだったのかな。
白はなんとなく浮いてしまいそう。仕上げは塗装することにします。残念ながら白いフィラメントしか持ってないので。
表側はヤスリがけして積層痕を消し、貰い物のタミヤカラースプレーで黒くぬりましたよ。ABSをプラカラーで塗装すると割れるってききますが、力がかかるところでなければ別にどうということはないです。
ABSはいいですね。ヤスリがけしても変な毛羽立ちもない、アセトンで接着できる、塗装も一般的なプラカラーで可能。もはやPLAには戻れません。臭いだけが問題です。
仕上げたケースに一通り詰め込んで配線。エポキシ接着剤を盛り付けて内部は完成です。
液晶の保護と防水のため、表示面には透明エンビでつくったパネルを貼ります。イラレでデータつくっていつもの業務用プリンタで印刷。白インクが使えるのが強みです。
無地だとあまりにも手作り感ありありなので SUZUKI のロゴだけ入れてみました。相変わらずデザインセンスがないなぁ。赤い帯に白抜きで DIGITAL TEMPMETER と書くのは、貧乏人のひがみみたいなので思いとどまりましたww
貼り付けはエポキシ接着剤。
バックライトの拡散がいまいちですね。もっとLEDを離せばよかったかも。
電線を塩ビチューブで保護してギボシとコネクタを取り付ければ完成です。とりあえずダミーのサーミスタをつけて12V給電してみました。
パネルのキズ消し前ですが、前の温度計との比較です。
見ての通り大幅な小型化に成功しました。メータまわりに対する温度計の存在感が薄れるため、いい感じになると思われます。
車体への取り付けは前のステーを流用する予定。週末、天気がよかったら載せてみましょうかね。
仕上がったらまた紹介します。
(2017/04/30追記)
先週の土曜日に取り付けて、近場のスキー場付近まで試験走行してみました。
結果は惨敗。ACCオンだけのときはOK、でもエンジンかけるとついたり消えたりしてお話になりませんでした。
どう見てもノイズです、はい。電源ラインにのってるんでしょう。
対策ですが、iPhoneの車載充電用DC-DCコンのときと同じ考え方でいきますか。サージ対策のツェナーダイオードと逆流防止のショットキーバリアダイオードを追加します。降圧しているわけではないので低ESR電解コンデンサはつけませぬ。
でまあ、これらを組み込んでエンジンをかけてみると、あらまあ温度計はちゃんと動作します。うまくいったのか? いやいや、配線の取り回しが変わったのでノイズを拾いにくくなっただけかもしれません。
なにはともあれこの状態で様子見、ひとまず完成とします。
(22907km) Tweet
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